ご質問ありがとうございます。
①蒸らしの効果や意味について
これは多くの方が説明するように、またご質問にも記載の通り、コーヒーのガス抜き、コーヒーと抽出水をなじませるためになります。焙煎後の豆の中は細胞壁が膨らみ焙煎により発生した二酸化炭素のガスが多く含まれる状態になるため、このガスを逃がして、コーヒー粉の内部までしっかりと水を浸透させて馴染ませるのが蒸らしの効果になります。粉と水をしっかりと馴染ませるのに必要な時間が蒸らし時間と考えます。
②”蒸らし時間2~30秒”の根拠について
よく蒸らし時間のレシピとして記載されるこの時間については、バリスタの方々の経験則に基づく通説である可能性が高そうです。いくつか科学的な論文をたどってみましたがはっきりとしたものは見つけられませんでした。一方で、この時間が本当に最適であるかという検証は、いくつかのYoutube動画やブログなどでも行われており、過去にはUCCの研究所でも試した事例がありました。2~30秒の範囲より十分でない場合はコーヒーの成分が十分に抽出されなかったり、酸味が強くなりすぎる、抽出がばらついて安定しない。といった結果が見られ、これを超過する場合はコーヒー成分がより多く抽出され、ケースによっては苦味、渋み、雑味がやや強くなってしまうといった結果が見られます。そのためこの2~30秒という時間は、バランスの良い味わいの、おいしいコーヒーを抽出するための最適な蒸らし時間としての妥当性があるように考えられます。
③なぜ、蒸らし時間はざっくりしているのか
これは以下の④でも触れますが、豆の状態(焙煎度、品種、粉砕した粉のサイズ、エイジング時間等)によってガスの保有量などが変わってきますので、絶対にこの条件、時間というのが定められないことによると思います。
④コーヒーによって蒸らし時間は変えた方がよいか?
①に立ち返って、蒸らしの目的をガス抜き、お湯と馴染ませることだとですので、蒸らし時間は変えた方が厳密にはいいと思います。具体的に○○秒という提案は難しいですが、標準を例えば20秒としたときに以下のような考えを参考にされてはと思います。
長くしてもいいのは⇒(1)焙煎が深煎りでガスが多い豆、(2)焙煎から日が浅くガスが多い豆、(3)カフェラテにする(牛乳で割る)ため、濃いめに抽出したい 時などです。
(1)や(2)の場合の目安は、粉全体に湯が行き渡ってから、コーヒーのふくらみが落ち着いてきたタイミング、コーヒー層の内側からの大きな気泡の発生がなくなったタイミングなどになります。
(3)は基本蒸らしの時間が長い(=トータルの抽出時間が長い)ほど濃いめのコーヒーが抽出できますが、香りの揮散や雑味成分の流出などが起こりうるので、目安1分以内くらいがちょうどいいかなと思います。
短くしてもいいのは⇒(1)焙煎が浅煎りでガスが少ない豆(2)焙煎から日が経ってガスが少ない豆 (3)粉砕からしばらく時間が経ってガスが十分に抜けた豆 (4)あっさり薄めに抽出したいとき (5)時間が無くて、薄くてもいいからとにかくドリップコーヒーを飲みたい時などです。
理由は長くしたい時の逆になります。こちらもしっかりとコーヒーにお湯が馴染んでいる、コーヒーからのガスの発生がほとんどない状態であれば、蒸らし時間を特に気にせず抽出を進めてしまってもさして問題はないかもしれません。
いつものように、長文になってしまいました。。
参考になればうれしいです。